在野研究を始めてみることにした〜勝手にはじめる研究生活〜

在野研究1

在野研究とは・・・大学や所属をもたずに研究を行うこと。

常々興味の分野に対する勉強を行ってきたが、聞かれるとあくまで「趣味です」と言い続けてきた。だが昨年末に購入した荒木先生の『これからのエリック・ホッファーのために: 在野研究者の生と心得』や『在野研究ビギナーズーー勝手にはじめる研究生活』を読んで、このようなカテゴリがあることを知った私は、この機会に在野研究を始めてみることにした。

なぜ在野研究をはじめるのか

「ライターより学者っぽい」

おそれおおいことだが、趣味を話すたびにいわれてきた言葉。人にいわれて書くものよりも、興味関心を掘り下げ、書籍を読み、実際に訪れ、それを発表することに喜びを感じる。読者の需要よりも自分の好奇心が勝ってしまう。

けれど自分は学者にはなれない。大学の専門分野(哲学)は現在の興味関心(歴史学・民俗学・地理学)とは異なるし、書籍は読めども授業を受けた経験もなければ、その分野で論文を書いた経験もない。

「やはりただの趣味だ」

そう思って一定のモチベーションを保ちながら勉強を続けてきた。

在野研究を知ったのは、荒木優太先生の『これからのエリック・ホッファーのために: 在野研究者の生と心得』だった。この時は自分が在野研究をしようかなどという考えはなく、勧められるがままに軽い気持ちで読み切った。

初等教育も受けらないまま働きつつ研究者として成果を収めたエリック・ホッファーのように、大学に所属しない研究者たちをまとめている一冊。冒頭に書かれた「在野研究の心得」は、わたしのようなフリーランスにも当てはまる項目がある。

いくつか挙げておこう。

  • 在野仲間を探そう。
  • 未開拓の研究テーマを率先してやるべし。
  • 研究は長く細く続けるべし。
  • 発表に困った時は自分のメディアをつくってみる。
  • メディアと並行してコミュニティもつくろう。
  • 平易な表現や文体に努めるべし。
  • 地方に留まるからこそできる研究もある。
  • 専門領域に囚われるな。
  • 卑屈になるくらいだったら「文士」になれ。
  • 先行する研究者たちの歴史にまなべ。
  • この世界には、いくつもの<あがき方>があるじゃないか。

1年ほど前の私にはこれらの言葉が深く刺さり、その時にも書評のようなものを書いている。間違えてドメインごと消したので残ってはいないけれど!

まあこの本を読んで在野研究に興味を持ち、さらに同じく荒木先生の『在野研究ビギナーズ』をもって「ひっそりと始めてみようかな」と決めたのだ。

研究テーマが決まらない

「在野研究をはじめよう」

といっても、わたしにはたったひとつの研究テーマを選べるほど趣味が尖ってはいなかった。好きなことを「広く・浅く・なんとなく」調べるのがわたしだ。

いくつか列挙して、やはりわたしは「石造物が気になる」と思い至った。ほかにも長野市鬼無里の「鬼女紅葉」伝説や「黒姫伝説」など、伝説に登場する強くて美しい姫も好きだから、こちらもかなり捨てがたい。う〜ん。でも。とにかく。最初は「石造物」にしようと考えた。なにも1つのテーマを永遠に調べる必要はないのだ。

石造物の中でも最近いちばん気になっているのは「首切り地蔵」。おそらく廃仏毀釈によって首を切られた石造物たちについて、具体的なことが知りたかった。首を切るとは、当時どのような意味のあることだったのだろう。誰が、どのような思いで斬ったのだろう。そこに私怨はあったのだろうか、それとも断腸の思いだったのだろうか。気になる。

・廃仏毀釈はなぜ起こったか(歴史的背景)
・各地域でどのように取り組まれたか(具体的な事例)
・なぜ「首を切る」のか(仏教感)
・その後首を戻された石仏たちに対する地域住民の思い(現在)

このあたりを知りたいのに、なかなか良い書籍が出てこなくて困っていたところだった。ならば自分で調べて自分でまとめればいいじゃない、というのがテーマに選んだ理由である。

廃仏毀釈と首切り地蔵にみる仏教感-なぜ石仏は首を切られたのか?長野県A町、B町、C町の首切り地蔵-」こんなテーマにしようと決めた。タイトルは仮。

どのように研究をすすめるか

廃仏毀釈についての論文や書籍は多く存在するが、長野県をフィールドにするものは、WEB上に多くない。長野県内では特に松本において廃仏毀釈が盛んであり、お寺の方を訪ねると当時のエピソードをたくさんうかがうことができる。おそらくローカルで探せば廃仏毀釈についての具体的な文献は残っているはずだ。

「仏像を山の中に隠して免れた」

「戦争でも役に立つと説得して廃寺を防いだ」

趣味で社寺巡りをしている時に聞いたが、今でも忘れられない話ばかり。ただわたしはフィールドワークの進め方がよく分かっていない。アポをとって、録音して、一寺一寺まとめていくべき?気になるところだけ適当に聞いてまわればいいの?う〜ん。

とりあえず『論文の書き方』と『論文の技法』を読んで勉強しようと思う(今から)。「在野研究には正解がない」と荒木先生もおっしゃっているので、多分大丈夫。

いつか一冊の本にするつもりで

浅く・広く勉強しているうちは「趣味」でも、論文を書き、一丁前に本など出せればそれはもう「専門」になるだろうか。プロとアマチュアの曖昧な世界において、フリーランスなんてフワフワした職業のわたしが信頼性や専門性を示せる方法は少ない。

いつか一冊の本にするつもりで、0からはじめる在野研究。

このブログでもちょくちょく研究の成果を発表していきたいと思う。もし在野研究をしたいと思っている方がいたら、こんな適当な気持ちで始める奴もいるのだと思って気を楽にしてほしい。

さて、『論文の書き方』を読み始めようっと。

この記事を書いた人

Yamamoto Maya

観光ライター/地域コンテンツデザイナー/イベントプロデューサー
兵庫県出身長野県在住。国立大学文学部、出版社勤務を経て2016年にフリーランスとして独立。長野県の御朱印・社寺紹介サイト「ごしゅメモ」信州のスキマを好きで埋める「Skima信州」など5サイトを運営。外部メディアにてライターを務める傍ら、長野県内観光サイトの企画や地域イベントの運営などに携わる。